伐採から価値づくりへ進化する林業|勉強会・製材実演会
もりとみず基金では、8月31日から1週間、東京科学大学の日高清史郎さんが活動に加わっています。
日高さんは「やまふたプロジェクト(※)」を研究対象に卒業論文を執筆する予定です。今回はそのためのフィールド調査として嶺北に滞在しました。
※やまふたプロジェクト:東京科学大の伊藤亜紗さん、NTT社会情報研究所の皆さん、もりとみず基金が連携して実施している「山のフタをあける」プロジェクト。詳しくは、下記URLからご覧ください。
https://www.moritomizu.org/news/post-1701/
そんな日高さんから、高松市塩江で開催された勉強会「伐採から価値づくりへ進化する林業|勉強会・製材実演会」の報告です!
「進化する林業」勉強会に参加しました。
高松市塩江町のまちづくりに取り組む、一般社団法人トピカさんの拠点・旧上西小学校で開催された、「伐採から価値づくりへ進化する林業」勉強会に参加しました。
塩江町の84%を占める森林、特に用材に向かない小径広葉樹などの活用を模索する中で、今回はるばる青森県から駆けつけてくださったのが合同会社Yew Village代表の皆上さんです。
午前の熱量のある講義から、午後の製材実演・体験まで、林業やものづくりの概念がガラリと変わる濃密な1日となりました。
その様子をレポートします!
丸太の価値を「バグらせる」
元青森県庁の林業職という経歴を持つ皆上さん。
林業職でありながら、自身に現場の経験のないことに違和感を覚え、実家の山林の手入れを始めたそうです。
その際に、
「50~60年育てた丸太をそのまま売っても数千円~1万円程度にしかならない」
という林業の厳しい現実に疑問を持ったそうです。
「祖父が遺産として植えてくれた木が、そんな安いわけがない。」
「市場価値なんかで売りたくない」
そんな強い想いが原動力となり、
「市場価値に左右される丸太を売るのではなく、形を変えて価値をバグらせる」
との考えから、林業の6次産業化を目指し、
皆上さんの型破りな挑戦と試行錯誤が始まったそうです。
- 切り捨て間伐材から作った「おちょこ」を緑の募金と組み合わせ即完
- Nikonや地元企業を巻き込み、木を一本も切らずに写真で稼いだ「きこりカレンダー」
- 農機具小屋のセルフビルドや、中古モルダーを用いたフローリング生産・販売
自身の専門分野でない領域も、
「素人感覚で小さく素早く挑戦し、最後までやり切ることが大事」
という言葉が深く心に刺さりました。
ターボソーミルの実演&製材体験!
午後はいよいよ、「ターボソーミル」の実演と体験です。

『驚きのスピードと整備性』
一般的な帯鋸(バンドソー)は、丸太を回転させながら挽く重労働が必要ですが、ターボソーミルは丸鋸の刃が、往路と復路で縦横90度切り替わるスイングブレード機構。
往復させるだけで角材や板がサクサク切り出されていきます!
午前の講義でも、
「帯鋸と比べて歩留まりの差は-5%程度ながらも、作業時間は半分以下に短縮された」
とおっしゃっていましたが、切り出した材を製品化するにはもう一手間加える必要はありつつも、目の前で次々と板が挽かれていくスピード感は圧巻そのものでした!

何よりも驚きなのが、その整備性の高さです!
一般的な帯鋸やチェーンソーは「目立て」と呼ばれる刃のメンテナンスが必須で、目立ての精度が仕事の精度に直結します。
しかし、この目立てには高度な技術を要する上、手間もかかります。
ところがターボソーミルは目立ては非常に簡単。
付属の目立て機を装着することで誰でも同様の仕上がりになります!
加えて、刃の交換は半年~1年に一回程度で良いとのことです。

『実際に製材を体験してみた!』
私も実際にターボソーミルによる荒製材を体験しました。
回転する丸鋸と連動したハンドルを押し込んで前進させ、切り込みの音や手応えを感じながら速度を調整します。
丸鋸の回転軌道の外から作業するので、キックバックの不安も少なく、刃に油を注す必要がないので、飛散するおが屑が油と混ざってベタベタすることもありません!
往路で水平方向を切断したら、ハンドルの近くにあるレバーを引き、刃を90度スイングさせ、復路では鉛直方向の切断です。
そして、このスイングブレード機構が秀逸で、丸鋸の回転方向は同じながらも、往路復路ともに刃の回転方向とは逆向きに作業することになるので、刃が走り出す心配がありません!
誤った操作をした場合も、エンジンが自動で停止する安全機構も組み込まれているそうです。
切断を終え、切り出した板を確認すると、初めての経験ながらも、皆上さんがデモンストレーションの際に切り出した板と、同程度のクオリティの板を切り出せたことに感動しました。
直感的な操作と安全性、技術を問わない整備性、誰でも同じクオリティで荒製材できる再現性。
それほどまでにターボソーミルの体験は革命的でした!


おわりに
「木を切って終わり」「市場に出して終わり」
ではなく、地域の森にある木を自分たちの手で挽き、加工して価値を与える。
巨大な製材工場がなくても、ポータブルな機械と少しの工夫があれば、
地域の中で小さく、けれど確かに経済を回していける可能性を強く感じました。
「今日が人生でいちばん若い日」
皆上さんのその言葉を胸に、自分たちの地域でも身近な森の資源をどう活かせるか、
小さくともアクションを起こしたい、そう思わせていただけました。
皆上さん、主催の一般社団法人トピカさん、貴重な機会をありがとうございました!