森づくりの基礎理論講習を実施しました
4/23-24の2日間で、森づくりの基礎理論講習を実施しました。

この講習会は、林業をしていく上で必要な森に関する基礎的な理論を学び、豊かな森づくりを考えるヒントにしてもらうために毎年開催しています。
森林は、自然生態系の原理原則の枠の中で変化、成長していきます。特に人工林は、植えられてから収穫されるまでの間で、人が定期的に手を加えることで、その状況を変えていきます。人の影響も含めた森づくりの手法を体系立てているものが「造林学」という学問になります。
林業というと伐ったり搬出したりする技術(技能)にスポットライトが当たりますが、そもそもどういった作業をどれぐらいすべきなのか、間伐であればどの木をどれぐらい伐ったらいいのか、という計画や判断がその背後にはあります。それは感覚的にやられていることが多いのですが、その判断を支えるための基本的な理論がきちんとあるわけです。
理論で答えを出すことはできませんが、理論で考える道筋をつけることはできます。
森づくりの基本的な理論をきちんと理解したうえで、具体的な目の前の森をつぶさに観察することで、やりたい森づくりに近づけるだけでなく、リスクを小さくしたり、失敗した場合の検証がしやすくなります。
今回はこうしたことを学ぶ講習会です。
講師はもりとみず基金の立川が担当しました。
1.基本的な論理を学ぶ
2日間のうちの1日目は室内での座学になります。座学では以下のような項目で話をしました。
- 樹木の成長の基本原理
- 樹種ごとの特性
- 森の混み合い度について
- 間伐の考え方
- 間伐遅れ林の取り扱い
- 森づくりで重要な考え方
樹木はそもそもどのように成長しているのか、それにはどういった要因が関わっているのかから始まり、特に人工林を確認するポイント、森が混み合っているかどうかの客観的な指標などを学んだうえで、具体的に間伐技術なお話をしました。

間伐の手法ややり方には様々な考え方があるのですが、正解のやり方というのはなく、森の状態や生産の仕方、経営的観点から複数のやり方を取捨選択する必要があります。その時に考えるべき観点について整理して解説しました。
特に、手入れが不足しているような間伐遅れの森は、整備のニーズはあるものの森の状態が不安定になっていることもあるので、取扱いには慎重を要することがあります。このあたりも最終的には現場をよく観察して、ということにはなるのですが、観察するポイントや潜むリスクについて理解をしていただきました。
2.現場に理論を照らし合わせる
2日目は現場実習として、1日目に習ったことを元に森の観察や計測を行いました。
まずはじめに参加者それぞれが一人になって、じっくり森を観察する時間を設けます。講義の内容も踏まえつつ、自分なりにどんなものが観察できるかを実践します。
森の観察では多様な視点を持つ必要があります。
植えられているスギやヒノキの状態だけでなく、地形の変化や下層植生の状態・種類、広い範囲で見たときの成長の良しあし、切株の有無などなど
対象物に近づいて見たり遠くから全体を見たりして分かることもあります。
観察ののちに一人一人からどんな観察ができたかを共有してもらい、自分とは違う視点で森を見ていることを知ってもらうことで、必要な視点の広さを実感してもらいました。

その後、森を測って、森の状態を客観的に評価します。
一定範囲の中にある木の本数、太さ(胸高直径)、高さ(樹高)、枝の位置(枝下高)など、指標のもととなる数値を測り、森の混み合い度の指標を計算します。

適度な込み具合の基準となる数値と比較しつつ、見た目と実際の数値とのすり合わせをしていきます。基準値はあくまで一般的なもので、目指すべき理想値ではないので現場の状況に合わせて調整をしていくことが重要ですが、観察した雰囲気と数値の関係性を一度見ておくことで、その感覚を養うことはできます。
計測後には、それを踏まえつつここではどんな森づくりができそうか、実際に間伐をするならどの木を伐るかなどもディスカッションをしました。こうした作業を通して、森づくりに対するイメージがかなり広がったのではと思います。

以上のような知見は木材を生産をするためだけであれば必要ないかもしれません。しかし、長く森と付き合っていき、短期的利益と長期的な利益を両立していく上では、林業者の方々にもこうした視点を持ってもらっておく必要がありますし、林業者それぞれのやりたい森づくりを実現していく上では不可欠な視点です。
森づくりの判断も最後はフィーリングになりますが、それは裏付けられた理論と経験があってこそできるものです。
2日程度の講義では、なかなか身に着くものではありませんが、ここで学んだ視点を持って日々森と向き合っていただけると、どんどん深まっていくのではないかと思います。
参加者の皆さんからはこんな声をいただきました。
普段施業のなかで感じていた疑問を確認することのできる機会であると同時に、他の受講者の方の考えを聞いて新たな視点を得られる機会となりました。
数値やデータで裏付けしつつ、結局は現場を目で見て感じ取るのが重要だと理解しました。
樹冠長率の大切さが、実際入った森の木々の様子から実感できました。
「間伐は樹冠を管理する技術」の意味をようやく飲み込めたように思います。今後、手探りしながら実践の機会が得られるように励んでいきたいです。