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森づくりの基礎理論講座を実施しました

5/19-20の2日間は、造林学を中心とした森づくりの基礎理論講座を実施しました。
造林学とは、樹木を植えて、育てて、収穫するまでの一連の作業(森づくりの技術)に関する学問です。林業をしていく上での基礎的な知識となります。
林業は、現場によって条件が異なるという特殊性を伴います。そのため、具体的な手法は常に応用的な技術であり、それだけを学んでも自分の地域や森林でそっくりそのまま実施することはできません。自らの技術をアレンジにするためにも、基本的な原理原則の理解が重要になってきます。

今回は、一連の作業の中でも「間伐」という作業を中心に学びました。
講師は、昨年と同様もりとみず基金のスタッフ立川真悟が務め、9名の方にご参加いただきました。

1日目

はじめに、講義の概要と目的を説明したうえで、早速実習を行う山に行きました。
今回の講義の目的は「初めて入る森の現状を観察するための視点を得る」でした。まずは、日常的に森林をどのように視ているのかを知るために説明を受けない状態で、どのようなことに気がついたのか、どんなに些細なことでも良いので、気づいたことをメモしてもらいました。

その後、各々で気づいたことをみんなで共有しました。

  • 地形や傾斜
  • 林床の明るさ
  • 土壌の状態
  • スギやヒノキの状態
    • コケの有無
    • 樹皮の状態
    • 樹高
    • 場所による成長の違い
  • 広葉樹やシダ植物の種類
  • 動物のフン
  • 動物がかじったあと

この時点で、森を観察して得られる情報はたくさんあるということが確認できました。

森を観察した後は室内に戻って講義を行いました。基本的な知識に関するものから、現場での活かし方まで幅広い説明がありました。
特に印象に残っているのが、樹木の成長についてです。
樹木の成長には2種類あります。
①樹高成長(高くなる)→立地条件や土地の肥え痩せに影響される
②肥大成長(太くなる)→葉の量に影響される
樹木のうち葉のついている部分を「樹冠」と言いますが、この樹冠が幹の太さを左右するというのが、大事な知識です。周りの樹木の影になった部分の葉は枯れていきます。このように、周りの樹木との競争の結果として樹冠が形成されるとのことでした。
成長段階にあった肥大成長を維持するためには、間伐を行い競争の度合いを調整して樹冠の形と大きさを保つことが重要であること。また、間伐を行うかどうかの指標として、①下層植生の有無・状態と②林冠の状態の2種類があることが強調されました。

2日目

2日目は、間伐の考え方を中心に解説がありました。
最初に、間伐には正解がないことが強調されました。それは、森の現状やどのような森にしたいかによって変わってくるからです。そのため、「なぜそのような木を選び、間伐を行ったのか?」を説明できることが大事になると説明がありました。
どれぐらいの強度で間伐を行うのか?や間伐の種類についても解説がありました。それらを踏まえたうえで、間伐を行ううえで重要な考え方について強調されました。

  • 同じ林分内で異なる手法を取ってもよい
  • 育てたい木、伐ることによって影響が与えられる木はどれになるのかを意識する
  • 切り足りないが原則(伐り足しはできる)

また、間伐したいからするのではなく、目標とする森林の姿に近づけるために行うという間伐は手段であるという重要な視点についてもお話をされました。

選木実践

講義が終わった後は、再び山に行きました。1日目と同様に、森林について気づいたことや考えたことについての個人で考え、共有しました。講義を解説を受けた点などを踏まえ、初日よりも多様な意見が出ました。

3班に分かれてそれぞれ指定された場所での、間伐する樹木と残したい樹木を選ぶ選木実践を行いました。間伐には、正解はないので各班でどのような森にしたいか?を考えたうえでどれを残して、どれを伐るのかを選択をしました。
最後に全員の前で各班での考えを発表しました。考え方に沿って、他の班の人から質問やこうすれば良いのではないか?とアドバイスをもらい、最後に立川さんから講評をいただきました。

今回は参加者は、昨年の造林学を受講した方と今年初めての受講した方の2パターンがありました。初めて受講した方は森の観察の仕方や間伐の考え方について新しい学ぶことも多かったのではないかと思います。森林の分野に限らず、習ったことを1度で全てを覚えられることは難しく、繰り返し学ぶことで身についていくものです。昨年受講した人にとっては、もう1度基本に立ち返る良い機会になったのではないかと思います。今回学んだことをそれぞれの現場で意識し、よりよい森づくりへとつなげていただきたいです。

参加者の方からは以下のような声をいただきました。
「これまでも森林に興味があり、樹種や生物などを観察していたつもりだったが、木をしっかりと分析的に観察することで森の総合的な判断ができるということがよくわかった。造林学に非常に興味が持てて、森を見るのが一層楽しくなった。」
「去年に引き続きの受講でしたが、樹木の生理を知って、現場で確認するという2度おいしい講座だと思います。」
「昨年も同じ研修を受講しましたが、知識や理解の再確認に役立ちました。」

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