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林業労働災害レスキュー訓練を実施しました

9/29(月)は、林業人材育成研修として林業労働災害レスキュー訓練を実施しました。
林業は足場の悪い山の中で、チェーンソー等を用いて、重量物である立木を伐倒するなど労働災害の発生率が高い業種です。もちろん、労働災害が発生しないように予防しておくことが大事ですが、労働災害が発生した時は迅速な対応が怪我を最小限に留めたり、生死を分けることにつながります。万が一、労働災害に遭遇したときには、どのように対応すれば良いのでしょうか?今回は、嶺北消防署の皆さんに対応の方法をお教えいただき、実際に消防防災ヘリを要請し救助を行うデモ訓練を行いました。

今回の研修は、本山町地域おこし協力隊の地域フォレスターと共同で主催をしました。地域フォレスターの活動として地域の林業者の安全性向上は重要なため、連携をさせていただきました。

参加者は、林業事業体や地域おこし協力隊の方々など28名でした。

林業における事故について

午前中の第1部として、林業における死亡事故の現状や事故への備え、実際の対応についてご説明いただきました。林業における事故は、全産業の平均の約10倍ととても高く、その約7割が50歳以上に集中しています。自身の能力を過信し、安全面への配慮が欠けることが重大な事故に繋がっていることが示唆されました。自分は大丈夫ではなく、もう一度安全に作業できているかどうか見直すことが大切です。

また、事故への備えとしては作業計画書を事前に消防署に提出しておくと、救急隊との連携をスムーズに行うことができます。作業計画書には、誰がどんな作業を行うか、作業を行う場所について地図や写真でわかりやすく記載しておきます。また、作業場所までの道順や分かれ道での進行方向なども写真等で記載しておくと救急隊が迷わずに現場に向かうことができるようになります。

林業での事故現場は車ではアクセスできないことも多く、ヘリを使用して救助活動を行うことがあります。高知県では2機の消防防災ヘリを所有しており、高知龍馬空港に待機しています。嶺北地域まで約15分で到着することができ、通報から早くて30分ほどで現場に到着できるそうです。

説明の中でヘリから地上を映した動画を見ましたが、ひらけている皆伐地ですら地上にいる人たちを見つけるのは困難でした。木々が生えている間伐の現場ではなおさらです。ヘリに正確な居場所を伝える1番の方法は、スマホのアプリ等でいる場所の緯度・経度を伝えることだそうです。それが難しい場合は、点滅するフラッシュライト空に向ける、樹上に目印をつける、木を揺らすなどを行うと発見しやすくなります。
発煙筒を用いたり、火を起こすなどして煙を上げる行為については、煙が真っ直ぐ上がらないことや思わぬ二次災害を生み出す可能性があるため推奨されていないとのことでした。

実技を交えた応急処置

午前中の第2部は、応急処置の方法について実際に皆さんにやっていただきながら学びました。
今回の実技は心肺蘇生を中心に行いました。

心肺蘇生は119番通報と同時または通報後に、傷病者の呼吸が確認できない際に胸骨圧迫と人工呼吸を行い、救命の可能性を高める応急措置です。人工呼吸ができない場合、胸骨圧迫を続けることで可能性は高めることができます。参加者の皆さんは、胸骨圧迫の練習を1度はやったことがある人が大半でした。今一度、胸骨圧迫を行うときの姿勢や圧迫する場所、強さや回数などについて再確認をしながら、胸骨圧迫を行いました。

実際に体験した後には、「思ったよりも力が必要だった」や「長く続けるのは疲れる」といった声が聞かれました。現役の消防士さんでも2分以上続けるのは大変だそうです。もしも、複数人いる場合は交代しながら行い、胸骨圧迫を絶やさないことが大切になることが強調されました。

他にも、蜂刺され等でアナフィラキシーショック発症した時のエピペンの使い方や出血時の止血方法、長時間の四肢圧迫が原因で生じるクラッシュ症候群についても説明がありました。

消防防災ヘリでの救助を見学

午後は、本山町の雁山にて実際に消防防災ヘリを使用した救助訓練を行いました。
現場での救命活動は消防隊の方が行うので、今回は接近してくるヘリの音の大きさや風の強さを体験しました。ヘリを間近で見ることができる機会はそうそうありません。ヘリは、イヤーマフをしていても大きな音が聞こえました。耳を塞ぐものがなければ、より大きな音が入ってくると思うと少しゾッとしました。

ヘリによる風は最初は全然感じなかったのですが、真上にヘリが来て、その場に留まった時に台風並みの風に襲われました。周りの木はものすごく揺れ、巻き上げられた砂が目や鼻、口に入って来ました。フェイスガードしていたので大きなものが顔に当たることはなかったのですが、ドングリも飛んでくることがあるそうです。

今回は、伐倒作業中の事故での担架吊り上げと蜂刺されによる吊り上げの2つの事例に想定して2回の搬送デモを行いました。事故で救助要請をした時と同様に携帯電話を使用し、代表者1名がヘリに乗っている航空隊の方と連絡を行いました。携帯電話をスピーカーモードにできないので実際のやり取りを聞くことはできませんでしたが、航空隊の方とのやり取りは、だいぶタイムラグがあるようでした。

他にも場面ごとで何をしているのか、お願いするかもしれない内容などについて説明がありました。

搬送訓練

訓練の最後に、搬送訓練を行いました。今回は、現場に担架がない状態を想定し人力や林業作業で使っている道具を用いて搬送する方法を学び、実践しました。

1人で運ぶ方法や複数人で運ぶ方法など様々な種類がありました。1番安定的に運ぶことができると感じたのは、ブルーシートや毛布を担架代わりに使用して、複数人で運ぶものでした。担架と遜色ないレベルで運ぶことができました。

複数人で搬送

色々な搬送方法を教えていただきましたが、傷病者はできる限りその場が動かさないのが原則です。特に林業現場では、傾斜があるため、運ぼうとした時に滑り、別の人が怪我や傷病者への負担増につながります。消防隊の方の指示を仰ぎながら、無茶な搬送は避けるようにすることが大切です。

おわりに

今回の訓練では、消防隊の方々から林業の現場で想定される事故や対応を中心に教えていただきました。実際に消防隊や航空隊の方々と話す機会は貴重だったかと思います。救助作業はお互いに協力して行うため、相互に理解しておく必要があります。今回の研修のその第一歩になりました。訓練は繰り返し行うことでいざという時に役に立ちますし、今回の訓練に嶺北地域の林業関係者全員が参加したわけではありませんので、このような訓練を定期的に実施したいと考えております。嶺北地域の労働災害に対する意識を上げられるように基金としても連携を行いながら進めていきます。


参加者の皆さんからは次のような感想をいただきました。

・実際に救助ヘリを初めて見て、座標や目印に向けて本当に来てくれるか、時間的にはどれぐらいかかるかなどを知れた。
・ヘリを要請されてから到着するまでの時間の感覚や風の強さ、隊員の方がその都度、この場面でこういうことをお願いするかも知れないということなど、普段聞くことができないことを知れた。
・ヘリの目印や怪我人の搬送のためにブルーシートを現場に常備するのがいいかもしれないと感じた。
・現地確認する際には境界や作業のプランニングだけでなく、救助スポットなどの検討も行う必要があると気づけた。

研修の様子はRKC高知放送にも取り上げられました。下記のYouTubeリンクからご覧ください。
https://youtu.be/p-QtJQN_7g8?si=VJS5zLmhsl2Fdj9S

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