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製材会社nojimokuを視察しました

8/7-8の2日間で三重県熊野市にある製材会社「株式会社nojimoku」への視察を行いました。
nojimokuは年間の製材量が8,000m3と製材量でいうと、中規模〜小規模の製材会社になりますが、さまざまな工夫を凝らしながら木材を販売している製材会社です。今回は、nojimokuが提供しているnojimokuツアーに参加し、木材へのこだわりや工夫についてたくさん教えていただきました。
株式会社nojimokuのHPはこちらからご覧ください!→https://nojimoku.jp

nojimokuツアー

はじめに野地社長から、nojimokuツアーやnojimokuについてのご説明いただきました。
nojimokuツアーは、もう20年近く実施しているそうです。ツアーのきっかけとして、どんなに木が良くても木材に対しての興味や知識がないために高く売ることができないという問題がありました。木の良さを感じるために必要な興味と知識を提供するべくnojimokuツアーを続けていました。

ツアー自体の説明が終わった後で、ひとつの質問を投げかけられました。
Q.製材所ってなんなん?
山で木を伐る人は、林業者や木こり、素材生産者と呼ばれることがあります。
木材で家を建てる人は、大工さんや工務店屋さんと言われます。
では、丸太を製材する人は、かつて木挽と呼ばれていましたが、今は?
言われてみれば、製材をしている人たちや製材所の仕事をうまく・わかりやすく説明することは難しいことに気がつきました。

セーザイゲームで知る製材所の仕事・役割

製材所ってなんなん?を知る手段としてセーザイゲームを行いました。それぞれ1人ひとり製材所の経営者となり、①セリ→②木取り→③換金という3つの工程を木がなくなるまで繰り返し行い、最終的な所持金額を競うゲームです。

セーザイゲームは、「地域社会に貢献し、熊野の木のファンを増やそう」を理念に三重県熊野市を中心に活動している熊野林星会で開発されました。熊野林星会は熊野市の川上・川中・川下の事業者が会員となり運営されています。そのため、セーザイゲームを遊ぶことで製材に関する知識はもちろん、林業のことや製材したものがどのように日常生活で使われているのかなど幅広く学ぶことができました。
セーザイゲーム・熊野林星会のHPはこちら→https://www.sezaigame.com

セーザイゲームを体験して気づいたことがたくさんありました。
ひとつは、丸太の仕入れに関してです。製材では、節があるかないかで丸太の価値が大きく左右されます。質の良い丸太を手にいれるための目利きの技術がとても重要になってくることがわかりました。林業家の人と製材所の人が良い木を見抜くときに着目する部分が一緒なのか、どの部分が違うのか少し気になりました。
もうひとつは、川中というポジションの難しさについてです。自分たちの目利きで川上から仕入れた丸太を製材して、工務店や建築家といった川下の人の要求するものに応えるものを作り上げるのが製材所だと感じました。丸太にも限りがありますし、川下側は川上や川中の状況を知らずに要求をしてくることもあるというなかで、製材所がコントロールできる部分が本当に少ないように思いました。この板挟みのなかで、材の質と量を安定して供給するのは、いろんな製材以外にも多様な技術が必要だと思いました。

製材のトレンドとnojimokuの選択

近年の製材のトレンドについて教えていただきました。
今は大型の製材機械を用いて画一的なものを大量生産するようになっています。住宅の作りやそれに求められる性能の変化などから、決まった規格や品質の製材品をいかに早く多く生産できるのかを追求した結果、製材所の大規模化が進んでいます。その結果、この20年間で製材の取扱量は増加しているのに対し、製材所の数は半減しています。

この流れは小規模・中規模製材所にとって苦しいものでした。そのなかで、nojimokuが取った戦略が「できる製材所になる」です。
できる製材所とは
・管理できる体制と仕組みの構築
・製品の一貫生産
・職人の勘と材の品質を可視化し、説明できるようにすることで、高まる市場要求の品質に対応
以上のような状態を目指すことにしました。

特に材の品質の可視化については、「思ってたのと違う」をできるだけなくすため、材の不良などを見える化し、長年のデータの蓄積を経てNOJISという独自の規格を15年掛けて作り上げました。
NOJISはJIS規格(日本産業規格)よりも材の品質を独自の基準でさらに細分化したものです。材の色味や木目の見え方や割れや曲がりに関しても細かい基準が設定されています。
また、常に変化する市場のニーズや細微なクレームにも対応できるようにNOJISは今も更新し続けているそうです。

基準も一目でわかるようになっている

基準を細分化することによって、お客さんにより多くの選択肢を提示することができるようになりました。それは製材所から品質と価格のバランス調整を行うことにつながります。製材所から工務店や建築家、施主などの川下に提案ができるようになり、材の高付加価値化を実現しました。

野地社長の考える製材所の役割とは?

野地社長によりnojimokuの説明の最後に製材・製材所とは何かついての考えについてお話しいただきました。
まず、製材は利益のあげるためにさまざまな方法があり、地域の森林資源を活かす機能や役割を担っていること。そして、製材所は川上である林業者と川下である建築家や工務店、商品を手に取る人とをつなぐ役割を果たしているんだと話されました。

工場見学

nojimokuの説明を受けた後、1日目の夕方・2日目のお昼にかけて工場をいくつか見せてもらいました。データ管理や検品作業、製材の様子などが見ることができました。

そのなかでも、僕が1番印象に残っているのが天然乾燥機の開発です。
今、主流の人工乾燥機は1週間で材の乾燥を行うことができるのが最大の強みです。
しかし、重油を大量に消費し、機械そのものに莫大な費用がかかることや樹種や厚みを統一させる必要があるなど小規模・中規模の製材所の現状とうまくマッチしていません。そこで、nojimokuでは費用を抑えることを念頭に独自の天然乾燥機を開発しました。

見学した工場では試作品を含めて4つの天然乾燥機が並ぶ

天然乾燥に関する実験とデータ収集を行い、試行錯誤の末に完成した天然乾燥機はsec andと名付けられました。sec andは、安価でかつ樹種や厚みがバラバラでも同時に乾燥させることが可能となり人工乾燥機の課題を克服しました。しかし、乾燥までに約3ヶ月かかってしまいます。現在は、注文から納品までのスピード等で人工乾燥機と天然乾燥機それぞれで乾燥した材を出荷しています。
野地社長は天然乾燥機の数を増やしていけば、絶えず乾燥が終わった材が完成する状態になり、人工乾燥機よりも1秒あたりの材の乾燥量を超えるだろうという思いがsec andに込められていると話されました。これからの発展が楽しみな取り組みでした。

他にも、至るところでしっかりとデータを取ることや意思疎通を図り「視える化」するための工夫が感じられました。

おわりに

nojimokuの視察を通して、正直ここまでやるのかというレベルの製材へのこだわり・丁寧さを痛感しました。

様々な取組みの根底にあるのは、「時代の変化に対してどう対応できるか、どこが変えられるのか」という視点でした。ニーズが変われば作るものも変えるべきではありますが、製材品という範囲の中でその変化にどう対応できるのか、変えられない部分をどう伝えて納得してもらうか、その部分を常に突き詰めている姿勢を見ることができました。


nojimokuがやっていたことをそっくりそのまま嶺北で実践してもおそらく上手くいかないと思います。しかし、大規模な製材所と小規模な製材所の両方があり、丁寧に林業を行い良質な木を出すことができる山もある嶺北地域でより木材産業を盛り上げていくために必要なものについて少し見えた視察となりました。
今後、基金としても今回の得たものを皆さんに広げていけるような研修も考えていますので、お待ちください!

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